ラベルに描かれた「聖獣麒麟」とは!
中国では古代から多くの書物や神話に登場する麒麟。姿、形などに諸説あり謎多き存在です。今回は、麒麟麦酒株式会社の社名やラベルデザイン誕生の物語と「聖獣麒麟」をご紹介します。
麒麟は紀元前から中国に伝わる伝説上の動物です。慶事の前に現れると言われ、おめでたいしるしとも考えられています。
伝説では、他を慈しみ、思いやりを持った動物で“仁獣”とも表現され、“生きている虫を踏まず、草を折らない”、“百獣の長”である、また“天下泰平のしるし”、とも言われています。日本国内の神社・仏閣の彫刻や装飾にも多く用いられ、日光東照宮や正倉院の宝物、また京都の祇園祭の山鉾でもその姿を見ることができます。
容姿や特徴については様々で、麒麟の発祥地である中国でも、時代や地域によって異なります。歴史的文献に多く残されている記述では、「身体は鹿、尾は牛、1本の角がある」というような表現が多く見られますが、数あるものの中には獅子や馬のような体つきだったり、翼を持っていたり、角が2本ある麒麟の彫刻や絵画なども現存しています。
キリンビールの前身会社ジャパン・ブルワリー・カンパニー(JBC)が、「キリンビール」と名付けたビールを発売したのは、1888(明治21)年のこと。この「キリンビール」のラベルには、古代中国の想像上の動物「麒麟」の姿が描かれています。当時、西洋から輸入されてくるビールには狼や猫などの動物を描いたラベルが多かったことから、三菱社の本社支配人であった荘田平五郎が「東洋には麒麟という霊獣がいるのだから、それを商標にしよう」と提案したと言われています。この明治を代表する実業家こそが、130年以上つづくブランド「キリンビール」の名付け親なのです。
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発売時のラベルには「麒麟」が小さく描かれていましたが、翌1889(明治22)年、JBCの重役であったトーマス・ブレーク・グラバーの提案により、「聖獣麒麟」が大きく描かれた、現在もおなじみのデザインへ変更されました。ラベルのデザイナーに関しては、漆工芸家の六角紫水と言われていますが、残念ながら証拠となる資料は残されていません。
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聖獣麒麟の図柄の中に、「キ」「リ」「ン」の隠し文字があるのをご存じでしょうか?確認できている範囲では1933(昭和8)年のラベルにはすでに描かれていました。この隠し文字は模造品を防止するために描かれたという説や、デザイナーの遊び心だったのでは?など諸説ありますが、これも理由は分かっていません。
現在のキリンラガービールの隠し文字
1889(明治22)年から「キリンビール」のラベルに現れた、現デザインの原型となった聖獣麒麟は、どのような意図をもってデザインされたのか、資料が失われていて判っていません。しかし、古くから伝わっているように、思いやりを持ち、太平の世の中に現れると言われている聖獣麒麟は、わたしたちキリングループの誇りでもあります。