『和蘭(おらんだ)問答』は、江戸時代半ば、阿蘭陀(おらんだ)通詞(当時の通訳兼商務官)の今村市兵衛と名村五兵衛が、オランダ人から得た情報を中心に記した書物である。ここに、1724(享保9)年、オランダ商館長・ヨハネス・テイデンスの一行が江戸を訪れた際、宿舎の「長崎屋」でビールがふるまわれた時の様子を記した文章が収められている。
その中には、「酒はぶどうにて作り申候。また麦にても作り申候。麦酒給見申候処、殊の外悪敷物にて何のあぢはひも無御座候。名をビイルと申候」とある。また、「右コップ、三人一所によせ、ちんちんとならし合せ候」とあるのは、オランダ人らがグラスを合わせて乾杯する様子を描写したものであろうか。この時代から既に「ビイル」という呼称が使われていたことも分かる。
この『和蘭問答』は日本人がはじめて書いたビールの味に関する記述とされている。