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コラム

1919年

雑誌『日本一』のなかに「ビール党」の言葉

1914(大正3)〜1918(大正7)年の第一次世界大戦による好景気は、ビール業界にも大きな影響を与えた。それまで不景気のあおりを受けて伸び悩んでいた国内需要が急増、生産高も急激に増加していく。

ちょうどその頃に登場したのが、現在でもしばしば使われる「ビール党」という言葉だ。当時発行されていた雑誌『日本一』の1919(大正8)年1月号に、山本敬三という人物が書いた「国民的飲料としての日本酒」という記事がある。山本は日本酒の醸造試験場技師で、日本酒も「醸造高を増加させて、価格をもっと低く」すべきだ、と主張しているのだが、その中に「(最近)いわゆる『ビール党』の言葉が生まれ」との一文が見られる。物珍しさからではなく習慣としてビールを楽しむ人が、すでにかなりの数いたことがうかがえる。

そして、そのビール人気を支えたのは、工業の発展とともに都市に出現した「サラリーマン」たちであった。多くの人が職住一致していた時代と違い、毎日会社へと通勤するサラリーマンたちには、カフェーや喫茶店、活動写真、そしてビアホールなどの「街の娯楽」はなくてはならないものになりつつあった。そうした時代状況こそが、多くのビール愛飲者たち、すなわち「ビール党」を生み出す背景となっていたのである。

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