戦時下で、ビールの生産・販売も政府の統制下に置かれていた1943(昭和18)年、ビールの商標が廃止されることが決定した。それまでビールびんに貼ってあった銘柄別のラベルは姿を消し、「麦酒」の文字と、「家庭用」「業務用」などの用途、その下に小さく製造会社名が刷り込まれただけのラベルに取って代わられることになった。
また、商標の廃止と同時に、びんの共用化も進んだ。その後約20年間にわたって、びんのエンボスに書かれたブランド名と中味が違う状況が続いた。この頃、ビールはすでに配給制となっており、効率よく配給を行うには、ある一つの地域に届けられるビールは、同じ一つの工場で製造されたものであったほうがよい。そうしたもっとも合理的なルートを構築するためには、ビールのブランドや銘柄へのこだわりは不要とされ、容器も統一されたのである。1943(昭和18)年中には用途別の表記もなくなり、「麦酒」とだけ書かれたさらに簡素なラベルになった。