1994(平成6)年4月、酒税法の改正により、ビールの製造免許をとるのに必要な最低製造量がそれまでの年間2,000KLから清酒と同じ60KLにまで引き下げられた。これにより、大手メーカーにしか許されていなかったビール製造が、各地の中小メーカーにも可能になり、日本全国で個性豊かな「地ビール」が誕生することになった。
この年の暮れ、北海道と新潟の2業者が「第1号」としてビール製造免許を得たのを皮切りに、全国各地で新規参入が相次ぎ、一時は全国で300か所もの地ビール製造所が誕生。できたての地ビールが飲める「地ビールパブ」や、さまざまな地ビールの飲み比べができるイベント、店なども登場し、空前の「地ビールブーム」となった。大手ビールメーカーも、こうした動きをビール業界に活気をもたらすものとして歓迎し、ノウハウの提供などを通じて、新規参入の支援を行ったのである。
その後、一時のブームは沈静化したものの、現在でも地ビールの製造を行う業者は全国で200以上。野菜や果物、ハーブなど地元の名産品を使用し、土産物として人気を集めているものも多い。地ビールの登場は、その個性豊かな味や香りを楽しむという、新たなビールの楽しみ方を定着させたといえるかもしれない。