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コラム

1853年

川本幸民がビールの醸造実験

川本幸民は、幕末から明治初頭に活躍した蘭学者で、日本人で初めてビールの醸造に取り組んだ人物とされる。1810(文化7)年、現在の兵庫県三田市に生まれた幸民は、江戸で蘭学を学んだ後、物理・化学の分野の翻訳や執筆でも才能を発揮した。また、その過程で化学の実験を多数行っており、その一つとしてビール醸造の実験にも取り組んだとされる。 一説によれば、1853(嘉永6)年前後、幸民は江戸の自宅でビールの醸造実験を行ったという。さらには、浅草下谷の曹源寺境内で、桂小五郎や大村益次郎、橋本左内といったそうそうたる人物を招いてビールの試飲会を行ったという話も伝わっている。

幸民がビール醸造の参考にしたと思われる『化学新書』は、当時ヨーロッパで広く読まれていたドイツの農芸化学書を幸民がオランダ語版から重訳したもので、「化学」の訳語が日本で初めて使用された例としても知られている。この中には、発酵法による温度管理の違いをはじめビールの醸造法が非常に細かく説明されている。

現在、川本幸民がビール醸造を行ったことを記した資料は残っていない。しかし、その記述の正確さから、幸民は「実験」の一貫としてビールを醸造したと考えられる。

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