中国から世界各地へと広まったお茶は、現在、じつに80ケ国以上の国々で飲まれるようになっています。そして、それぞれの地域の気候風土や食生活の影響を受けながら、飲み方の工夫がなされてきました。その一例をご紹介しましょう。
| 北アフリカ: | 緑茶にフレッシュミントと砂糖をたっぷり入れたミントティーを飲みます。アルジェリアでは訪問すると必ず出され、出されたら必ず飲むのがマナーです。 |
| トルコ: | トルコといえばコーヒーが知られていますが、実は紅茶が主流です。たっぷり砂糖を加えて、一日に何杯も飲みます。オスマン朝(1299〜1922)時代に男性のみが出入りしたカフヴェ(カフェ)に変わり、近年はチャイハネ(茶店)が登場し、男女問わずチャイを楽しんでいます。 |
| インド: | イギリスの植民地時代に喫茶の習慣が持ち込まれました。日常的に飲まれているのは、茶葉を煮出した牛乳入りのチャイと呼ばれるミルクティー。それにスパイスを加えたマサラティーも人気です。 |
| モンゴル: | 乾燥地であるため、水分と栄養補給のため家畜の乳と茶を混ぜた乳茶が1日に約2リットルも飲まれています。来客時にも乳茶をふるまいます。 |
茶の流通の手段や経路が充実したことで、現在はより手軽に飲める紅茶が広く利用されています。一方でそれぞれの国の立地条件や、宗教・食文化などを背景に育まれた茶の文化は、脈々と引き継がれているのです。
世界のいろいろな紅茶の淹れ方(インド)
インドの街の市場でのチャイ売りの様子。
深い銅の鍋で紅茶を煮立て、すりつぶしたスパイスと牛乳を加え、仕上げにざらめの砂糖を加える。
沸騰して表面が盛り上がったら茶漉しを通してマグガップに注ぐ。それを右手で頭上高く持ち上げて、左手に持った空のカップめがけて注ぐ。
カップからカップへ注ぎ落とすこと二〜三回。泡がいっぱい立って、ほどよく冷めて飲みやすくなる。これをガラスのコップに移して出来上がり。
唇をとがらせてすすると、甘さが口一杯に広がり、次いでピリッとするブラックペッパーの刺激、カルダモンの爽やかさが感じられる。
(出典・資料提供:紅茶研究家・磯淵猛氏)