(5)都市の若者層に受け入れられた自動販売機
缶ビールの自動販売機は1962(昭和37)年頃から主にビール会社と機械会社とのタイアップで開発された。それより前にも自動販売機を設置している酒販店はあったが、ビール会社が開発を始めたのは、設置場所の制限が緩和された1962(昭和37)年のことであった。はじめ設置台数はなかなか伸びなかったが、1970(昭和45)年頃から増加に転じた。これに伴って缶ビールの普及率も上昇を始めた。1970年代前半には全国的に設置台数が伸び、ビール会社各社も自動販売機を重要な販売ルートと考えるようになった。
ビール自動販売機が伸びた背景には、酒販店の人手不足、ライフスタイルの変化、その変化に敏感な若者や女性のビール愛好者の増加、アルミ缶の開発などがあった。また、当時は団塊世代が新入社員や大学生だった時代であり、地方から都市に流出する若者人口が増加し、都会では一人暮らし世帯が増えていた。一人暮らしや共働きの家庭には、宅配は不都合なため、仕事帰りに缶ビールを買うことのできるビール自動販売機が受け入れられた。
国内の酒類の自動販売機設置台数は、1992年に20万1,000台とピークを迎えたが、その後は未成年者の飲酒を防ぐ目的から設置を自粛している。