(2)あの主役たちも愛飲
高度経済成長期を経て、ビールは老若男女を問わず日常的に飲まれるようになった。
昭和40年代以降の邦画では、ビールが実にさまざまな状況で登場する。1969(昭和44)年にスタートした山田洋次監督『男はつらいよ』シリーズでも、ビールは欠かせない小道具で、寅次郎が戻ると「おばちゃん」はぶつぶつ言いながらもうれしげにビールの用意をするのだった。また同監督の1977(昭和52)年公開の『幸福の黄色いハンカチ』では網走刑務所から出所した主人公(高倉健)が、最初に入った食堂でまずビールを注文し、それからカツ丼とラーメンを注文する。そのときのビールをしみじみうまそうに飲む姿を、多くの人々がまねしたそうだ。
缶ビールが普及した昭和50年代には、映画のビールも缶ビールが多くなる。降旗康男監督の『居酒屋兆治』(1983年公開)で、高倉健と田中邦衛が釣りを楽しみながら飲むのも缶ビールだった。