酒・飲料の歴史 日本のビールの歴史 酒・飲料の歴史 日本のビールの歴史

時代別解説

大正2年〜昭和14年(1912〜1939)

都市文化の勃興とビール

(5)家庭で飲まれ始めたビール
ビアホールやカフェーなどでビールに親しんだ人々は、少しずつではあるが、家庭でもビールを飲むようになった。週刊誌『サンデー毎日』1928(昭和3)年6月24日号には、「夏の夜の食卓――冷たいビールの取肴」、同じく1930(昭和5)年8月17日号には「ビール問答 琥珀色の誘惑! 夏の魅惑!――ビールは今や季節の寵児である」という記事が掲載されている。このように、暑い夏の涼味としてビールを家庭で楽しむ特集記事も出てきた。

だがビールによる晩酌は、まだ一般的ではなかった。昭和初期のビールの値段は大びん1本30〜40銭だった。一般企業の課長クラスが月給100円ほどだったので、毎日1本ずつ飲むと給料の10分の1はビールに消えてしまう。岡本一平が当時描いた漫画には、妻が「ビールはもう2本あがったら沢山です」と言って隠してしまったビールをそっと手元に引き寄せようとしている食事中の夫の姿が描かれている。ビールはそれほど気楽には飲めない嗜好品だったようだ。

1924(大正13)年までは、ほぼ毎年のように伸び続けていたビールの生産量は、その後、昭和初期の不況期をはさむ約10年間伸び悩んだが、1933(昭和8)年には100万石の大台を突破した。1939(昭和14)年には約173万4,435石(約31万2,198KL)と、戦前におけるピークを迎えた。
「晩酌にビール」(岡本一平画)

「晩酌にビール」(岡本一平画/『増補一平全集 第13巻』大空社)


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